先生。あなたはバカですか?

「いや!違うだろ!そこはもっとこう、出てきた瞬間ムラッとさせるような!あるだろ普通!お決まりの展開がよ!!」


「知りませんよ。漫画とかの見すぎじゃないですか?」


なんて言いつつ、別に私は普段からこんな格好を部屋着としているわけではない。


さすがの不良教師もダサいジャージ姿の女に変な気を起こしたりはしないだろう。という、私の作戦なわけなのだが。


「やり直し!バスルーム出てくる所からやり直しだ!!俺のシャツ貸してやるから、世の男達のロマン“彼シャツ萌え袖”を直ちに実行しろ!!」


「バカ言わないでください」


見事、その作戦は功を奏したようで、先生は「ムードもなんもあったもんじゃねぇ…」とガックリ肩を落としている。


確かに女子力0のこの格好。


仮にも恋人の前で。しかも、聖なる夜に見せるものではないだろう。


だけど、背に腹は変えられない。


先生には申し訳ないけれど、私にはまだ先生と“そう”なる心の準備は出来ていないんだ。







時計の針が0時を回ろうとしていた。


「そろそろ寝るか?」


ローテーブルの上で勉強に精を出す私の横で、ノートパソコンを開き、何やら仕事をしていた先生がパタンッとそれを閉じる。
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