先生。あなたはバカですか?
私はその音にビクッと肩を揺らし、シャーペンを動かす手をピタリと止めた。


「も…もうですか?」


「明日はお前、午前中から予備校なんだろ?」


ローテーブルに気怠そうに頬杖をついた状態でこちらを見る先生と視線がぶつかって、思わずドキッとしてしまう。


勉強に集中していて気付かなかったけれど、先生はいつの間にか眼鏡をかけていた。


恐らく、パソコンを使う時だけ使用しているものみたいだけど……。


この男…ただ眼鏡をかけただけなのに、なぜこんなにも色っぽいのか…。


少しはその色気、私にも分けてほしい。


って、学ジャーを着た私が言うことじゃないけれど……。


「おい。聞いてるのかよ?」


「あ…き、聞いてますっ!明日は早いから寝ろってことですよね?」


「そう。ガキはさっさと寝ろ」


子供扱いされたことにムッとすると、それを見た先生がニヤッと口角を上げる。


いや、翠。これでいいのよ。


今の私は子供扱いされているくらいが丁度いいの。


それこそ、学ジャーを着たかいがあったってものだ。


「そ、そうですね。じゃあ、私はこのソファーをお借りします。先生はどうぞ自室へ」


その言葉に、先生はあからさまに眉をしかめる。


「何言ってんだ?お前も俺のベッドで寝るんだよ」


「……な…っ」
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