先生。あなたはバカですか?
私のバカバカバカバカ!!


意地なんて張るんじゃなかった!!


背後に先生の動きを感じる度に、心臓がバカみたいに激しく脈を打つ。


この部屋だって、毛布だって、全部が岩田先生の香りでちっとも落ち着かない。


「電気消すぞ」


先生のその声を合図に部屋の灯りが消え、テーブルランプの温かい仄かな明かりだけが残った。


先生が手をついたのか、ギッとベッドが軋む。


緊張がピークに達して、うわー!うわー!うわー!と心の中で叫んでいると、ふいに「…翠」と呼ばれてビクッと体を強ばらせた。


「なん…ですか?」


「今日、楽しかったか?」


「…?…はい」


「なら良かった。俺、クリスマスとか祝うの初めてなんだよね。何すりゃいいのかよくわかんねーからあいつらに色々任せたけど、あれで良かったのかもよくわかんねー」


意外なその言葉に、そっと先生を振り返る。


「……初めて?」


「そう。初めて。小さい頃も両親と祝った覚えは一度もねーな」


驚いた様子の私に、先生は苦笑してみせる。


そして、仰向けのまま天井を仰いだ。


「両親教師っつっただろ?2人してクソ真面目の堅物人間でな。イベント事とか浮き足立ったことが嫌いで、パーティーなんて以ての外な家庭だったんだよ」
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