先生。あなたはバカですか?
「そんな事ないですっ!!」


私は思わず飛び起き、先生の部屋着の袖の辺りをギュッと握りしめた。


「先生は、欠落してなんかないです!!」


私が喜ぶと思って、花織ちゃんを誘ってくれたんでしょう?


恥ずかしいのに、必死でケーキを選んでくれたんでしょう?


私が寂しくないように、こうやって側にいてくれるんでしょう?


欠落してるだなんて、そんな事ない。


先生は、私を喜ばせる天才だ。


「凄く…本当に凄く楽しかったんですっ…。こんなに幸せだって思った事…ないくらいに…。今だって…凄く…」


必死に伝えようとする私に、先生はふっと顔を綻ばせて。


「やっと、まともにこっち見たな」


そう言って袖を掴んでいた私の手を握り、体を起こすと、そのまま私の額にキスを落した。


そして、私を抱き寄せるようにして耳元で。


「ありがとうな」


と囁く。


その甘い声に、一気に耳まで熱くなって“しまった!”と気付く。


近付き過ぎた!!


完全に警戒する事を忘れていた!!


「あわっ…あのあのこ、これは……」


「翠待って。動かないで。目、閉じて」


いやいやいやいや!


だから、そういうムードに持っていっちゃダメなんだってば!!
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