先生。あなたはバカですか?
え?


何?


何か嫌な予感しかしない。


「お前からキスしてよ」


一瞬時間が止まった気がした。


だけど、ものの数秒で我に返った私は。


「……ぬぁっ!?!?バババババババッッッカじゃないですかぁぁぁぁ!?…っうわぁぁ!!」


高速後ずさりをして、ベッドから転げ落ちた。


「さっきから、騒がしいやつだな」


あんたのせいだっっ!!


床に這いつくばりながら、この男を前にするとどうしても平静保てない自分に、ほとほと嫌気がさす。


「バ、バカな事ばかり言ってないで、後日きちんとプレゼントしますんで、欲しいものを教え…」


「物なんていらねーよ」


「……っ!」


「俺が欲しいのは、お前だけ」


何ていう…甘いセリフ…。


先生の熱っぽい視線も相まって、頭の芯がクラクラする。


顔にこれでもかってくらい熱が集まる。


……ダメだこのムード。


本当にダメだ。


「さっき…したじゃないですか」


「は?」


「う、うちの…玄関で」


頬に触れるだけのキスだけど、アレだって死ぬほど勇気がいったんだ。


「は。お前」


先生が、ベッドの下で踞る私の所までやって来て。


––––グイッ!


「キャッ…!」


私の腕を引き、またベッドの上まで引きずり上げる。
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