先生。あなたはバカですか?
「先生は、何でこのネックレスにしたんですか?」


「なに?気に入らなかった?」


「違うんです。凄く綺麗でデザインも素敵で嬉しいんです。…けど」


「けど?」


「私には、もったいないくらいだなって…」


胸元に手を当てると、ネックレスのトップ部分に触れる。


いかにも高そうなネックレスだからというのもそうだけど、このネックレスからは私じゃまだ到底見合わないほどの大人っぽさを感じて、先生が敢えてなぜ私にこのネックレスを選んだのか少し気にかかった。


すると先生は、私から体を少しだけ離してネックレスのトップ部分を指先で弄りながらクスリと笑った。


「そうだな。今のお前にはまだ似合わないな。つけててもまるで、子供が親のネックレスをこっそりとつけたみたいだ」


「そこまで言いますか?自分で選んでおいて」


「いいんだよ。敢えてそういうのを選んだんだから」


「え?」


先生は、ふっと息を漏らし笑って、トップの飾りにちゅっとキスをする。


その仕草に、また心臓が煩く騒ぎ出すもんだから、私ったら本当に世話がないな。



「……いつか、お前はきっとこのネックレスが似合う女になるよ」
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