先生。あなたはバカですか?
『峰山先生お久しぶりです。どうしたんですか?そんなに慌てて』


よほど急いでいたのか、呼吸の荒い峰山先生にキョトンとした顔でそう問えば。


『…生田。翔太に何も聞いてない?』


『岩田先生…ですか?聞くって何を?あの日以来会っていませんけど…』


誰かに聞かれても困る…と、口に手をかざし小声でそう言うと、峰山先生は『やっぱり…』と言って苦しそうに眉を寄せた。


『何かあったんですか?』


『生田…。落ち着いて聞いて』


私の両肩に置かれた峰山先生の手は、心なしか小刻みに震えていて、なんとも言えない嫌な予感が私の中でじわじわと渦を巻き始める。


峰山先生の手からゆっくりと視線を上げると、今にも泣き出しそうな峰山先生の顔がそこにあって……。


彼は私に、信じられない言葉を口にした。





『翔太がいなくなった』







心臓が一度大きく脈を打った後、止まってしまったかと思った。


周りの風景は全て霞んで。


息の仕方も忘れてしまって。



いなく……なった?


誰が?


先生が?


……岩田…先生が……?


何?


…どういう事?


峰山先生の言っている意味が分からない。
< 334 / 434 >

この作品をシェア

pagetop