先生。あなたはバカですか?
–––と、視界の端に光る物が映って目を凝らせば、そこにはクリスマスの日に先生からもらったネックレスがケースから飛び出し、地面に投げ出されていた。
“辛かったり、悲しかったり、どうしても立ち直れない事があったとしても、きっとそのネックレスがお前をそこまで導いてくれる…。”
あの日、そう言った先生の声がまるで近くにいるように鮮明に聞こえてきて。
私は、動く事さえ出来なかった体を持ち上げ四つん這いになりながら、何かに取り憑かれたかのようにそのネックレスの元まで行き、それを手に取った。
もう転んだ私の手を取り、起き上がらせてくれる人はいない。
私を起き上がらせられるのは、私しかいないんだ。
先生がこのネックレスをくれたのは、そんな私を見守っている。
きっと、そういう意味。
こんな所で諦めている場合じゃない。
私は、このネックレスに見合う女性になるために、どんな状況だって自分の力で乗り越えていかなくちゃいけないんだ。
それが、先生が私にくれた“願い”だから。
私は、ネックレスをギュッと握りしめ、急いでカバンの中身をしまうと、力強く立ち上がり、また走り出した––––。