先生。あなたはバカですか?


–––––––もう、先生はいない。



そう思った瞬間、体の力が抜けて膝から崩れ落ちてしまった。


先生。


先生先生先生。


やだよ。いなくならないで。


側にいて。


じゃないと心が……壊れてしまいそう。



「翠!?」



驚いたように声を上げ、駆け寄ってくるその姿に私はゆっくりと視線を上げる。


「お母……さん?」


「あなたその格好どうしたの!?」


私の体を起こそうとしたお母さんの顔が、青ざめたのが分かった。


「何よこれ…。信じられないくらい冷えてる…。あなた死にたいの!?」


自分の羽織っていたコートをかけながら、私に怒鳴るお母さんの声をぼうっと聞いていた。


「それでも……いいかもしれない」


「え?」


「いっそ、私も死んじゃえばいいのに…っ」


パタパタと、手の甲に落ちていく涙の雫。


「あなたそれ…本気で言ってるの?」


だって。


だってだってだって。


先生のいない世界なんて、生きてる意味がない。


だって、私の今いる世界を創ったのは先生なんだよ?


先生がいなきゃ意味がない。


こんな事になるくらいなら、一人ぼっちの世界で生きていた方がずっとよかった。


こんな気持ちになるくらいなら––––。
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