先生。あなたはバカですか?
「岩田先生は、今のあなたを見たらガッカリするでしょうね」


「………え?…お母さ……何で……」


「知ってるわよ。あの人があなたに近付いた理由も。あの人の病気の事も。クリスマスの何日か前、あの人に会って話を聞いたから」


先生が……?


先生に…会ったの?


「クリスマスの日、あなたを家に泊めたいと外泊の許可を求められたわ。親として…許可を出す事は出来ないと言う私に、彼は全てを話してくれた」




“最後にもう一度、目一杯甘やかしてやりたいんです。俺がいなくなっても、あいつが愛されてた事を疑わないように。あいつが迷わず前に進んでいけるように”


先生はお母さんに、そう言ったらしい。


「あなたは岩田先生のその想いを無駄にするの?死んでもいいだなんて、空っぽの人間の言う事よ。あなたは先生から大切なものを何も得なかったの?本当に空っぽなの?」



大切なもの…?


そんなの……



数え切れないくらいもらったに決まってるじゃないか。




“お前のその空っぽでつまらない世界、

俺がぶっ壊してやるよ”



そう言われたあの日から、私は先生に数え切れないくらいの大切なものをもらった。



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