先生。あなたはバカですか?

この場所に来てしまったら、きっと私はまたあの人の影を探してしまうから–––––。



あれから。


先生を失ったあの日から。


先生を忘れた日は一度だってない。


街を歩けば、気付けば人混みの中に先生の姿を探してしまう自分がいたし、先生と同じタバコの匂いがすれば振り返り、背の高い黒髪の男性を見れば、呼び止めてしまいそうになった。


もしかしたら。もしかしたらって何度も期待しては、ことごとく裏切られて。


その度に先生はもういないんだって思い知らされる。


3年経った今も、時々そうしてまた先生に会えるんじゃないか。そんな錯覚をおこす事があって。


だけど、そんなはずはなくて、あの時の気持ちを痛みと共に思い出すんだ。


だけど–––––。




「生田さん。大丈夫?」



そう。


だけど、その度にこうして川島君がいつも側にいてくれた。


心配そうに私の顔を覗き込む川島君。


川島君の表情はポーカーフェイスで分かりづらいけど、そう思ってくれてるんだなって伝わってくるから不思議だ。


「心配しすぎだよ。川島君」


私がクスッと笑うと。


「そうかもだけど…。生田さんには色々しんどい場所だと思うから」
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