先生。あなたはバカですか?
意気地無しだっていいよ。


カッコ悪くたっていい。


弱くて臆病な先生も。


強くて優しい先生も。


そんな先生を作る全てが、私には愛しいんだから––––。



全部。


全部全部全部。



–––––––––––大好き。





「先生。あなたはバカですか?」





座ったまま私を見上げる先生。


私はそんな先生を、衝動的に抱きしめていた。


「諦めたりしないでください」


「翠……?」


「私が側にいたいのは、昔も今も、先生ただ一人です」


あの時は、子供が言うただのわがままにしかならなかった言葉。


ただ、大人になったというだけで、こんなにも説得力のある言葉になるなんて……。


あの時の私は、今どんな顔をしているだろう?


大人になれば、一つ一つの言葉の重みや責任が増す。


その分、気をつけなければならない事も沢山沢山増えるけど、この想いを先生に伝える事ができるなら、どんな重荷も責任も背負いたいって思える。



ゆっくりと先生から体を離すと、いまいち状況を飲み込めていない様子の先生の顔が私を見上げた。


「私、川島君とは付き合っていません。図書室で言った事は全部嘘です」


「……は?」


「先生が私を忘れてるから…。頭にきてつい嘘をつきました」


「……待て。それじゃあ……」
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