先生。あなたはバカですか?
––––
––––––期待や希望、喜びや不安。
沢山の想いを乗せ、ヒラリ、ヒラリと舞う桜の花弁。
広げた手のひらに儚く落ちてきたそれを、私は優しく優しく包み込む。
落ちてきた元を辿れば、目の前に広がる空いっぱいの零れ桜に感嘆の息が漏れた。
*
ま、まずい……。
心臓が口から飛び出しそう。
なんてそんなの、漫画やなんかじゃあるまいし、絶対ありえない事だというのは分かってる。
だけど、そんな表現をしてしまう人の気持ちが、今なら少しだけ分かる気がするんだ。
体育館の脇に並べられたパイプ椅子。
それに座って、校長先生の長い長い話に耳を傾けているフリをしている私は、いっそ女優になる方が向いてるんじゃないかな。
なんて、冗談はさておき。
今日は、人生で初めて教師を務める学校での委任式。
私はようやく、教師としての一歩を踏み出そうとしている。
まだまだ話し足りない様子の校長先生から視線を外し、顔の向きはそのままでチラリと横に目をやれば、青いブレザーに赤いネクタイをした生徒達が整列していた。
この学校は、ブレザーなのよね。
私の高校時代は、セーラー服に紺色の学ランだったからなんだか少し新鮮な気分だ。
期待と不安が入り混じった私の心。