先生。あなたはバカですか?
当の川島君はというと、
さっきの子の言う通り清潔感たっぷりの綺麗な顔立ちをしていて、真っ黒な髪の毛は女の子のようにサラサラしている。
どうやら背も高いようで、座席から投げ出される足がどうも窮屈そうだ。
そして極め付けは、この気怠そうな雰囲気。
これは世に言う無気力男子というやつか…。
見ているのがバレてしまったのか、川島君とパチッと目が合う。
何か申し訳なくて、直ぐに参考書に目を移すと、
「サンキュ。断ってくれて」
そう言われて、驚いてまた彼に目を戻した。
あれ?
寝てる?
耳にはイヤホン。
腕組みをして、少し斜めに首を傾げながら目を瞑っている。
この人…勉強する気あるのかしら…。
移動時間一杯寝るつもり?
それにしたって、あんな律儀にお礼を言って貰えるなんて…
何か…。
「……どういたしまして。」
聞こえるはずはないけれど、私は小さくそう呟く。
無意識に頬が緩んでしまった私を、あの男が見ていたとも知らずに––––