先生。あなたはバカですか?
一斉に静まり返る車内に、ペンを動かす音だけが聞こえる。
さすが、成績上位者しか集まっていないだけあって、さっきまで騒いでいたのが嘘のようにみんな集中している。
これはちょっと…本気にならないとマズイかもしれない…。
プリントにある問数は10問。
解いていく程に難易度が上がっていく。
「……っ」
しばらくして、10問目に差し掛かった所で、私の手は止まってしまった。
まずい…さすがに10問目は一筋縄じゃいかない。
いくら解き直しても、上手く答えに辿り着かない。
そうこうしている間にも、先に誰かの手が挙がりそうで少し焦り出す。
ゔゔゔ……。
「生田さんさぁ…」
「え?」
迷走中に飛び込んでくる、私を呼ぶなんとも眠たそうな声に、思わず辺りを見回す。
パチッと目があったのは隣に座っている川島君。
声の主は間違いなく彼だ。
「生田さんもそんなに岩田先生にキスしてもらいたいの?」
………へ?
「…っなっ!?!?」
「しーっ」
眠たそうな顔の前で人差し指を立てる川島君。
川島君ファンの子が見たら、ドキッとしそうな仕草だ。