先生。あなたはバカですか?
だけど、今私はそれどころではない。
なんとも不名誉な疑惑を掛けられているのだから…。
声のボリュームを下げて、また問題に目を移しながら言う。
「そんなわけないじゃない。私が欲しいのは、問題集の方っ!」
「問題集?あんなのが欲しいの?」
川島君は不思議そうに首を傾げる。
「そうよ。悪い?
10冊もあれば、問題集買うお金が大分浮くでしょ」
「問題集くらい、親にねだれば喜んで買ってくれない?大学合格させたくて、親も必死でしょ」
「そうだけど。そういう事したくないから」
「え?」
「なるべく親に頼りたくないの」
女手一つで私の為に、身を削って働いてくれているお母さん。
そんなお母さんが稼いできてくれたお金が私の事に消えていくなんて申し訳ない。
ただでさえ、予備校に通うのにもお金の負担をかけているのに。
いくらお母さんの希望とはいえ、大学にだってまたお金は掛かるし、自分から参考書を買ってだなんて、口が裂けても言ってはいけないと思う。