“Three Years”isn't so long
“ごめん美和!新幹線遅れてる!”
「早く言えっつの…」
ようやくメッセージが来たのが、私がここに座ってぴったり40分。
色々冷静に計算してみれば、もっと前の段階で連絡をよこすこともできたと思うけど。
「乗ってから気付いた感じだなぁ、コレ…」
“アレ、これなんか時間ズレてるけど……まぁいいか”
とまぁ、こんな状況だと思う。おおかた皆川あたりの駅員のアナウンスで知ったのだろう。
「はァ。今さらこんなことに目くじら立てても仕方ないか」
界人のドジには昔から痛い目に合わされっぱなしだった。
木登りをして降りられなくなった界人を助けようとして、ふたり一緒に落ちたこともあった。
いじめっ子から助けてあげたのに、界人が全然泣き止まないせいで私がいじめっ子と勘違いされ、先生にこってりしぼられたこともあった。
界人に泣き付かれて界人の自由研究とポスター作りを徹夜で手伝ったこともあった。ちなみに界人は途中で寝てしまう始末。あのヤロウ。
それを思えば、今回はずいぶんやさしい方だ。
“もうお店にいるよ。店長も会いたがってるから急いでね”
それだけ返して、携帯をコトンと机に置く。
小さくて、弱っちくて、泣き虫で、ドジだった界人。
そんな界人の帰りを、今か今かと待っている私。
そんな私の心の内は、誰がどう見たって明白この上ないのだけれど。
自分自身の内から湧き上がるありきたりな感情を誤魔化すように、私はガタリと席を立ち、ドリンクバーへ向かった。