“Three Years”isn't so long
あの迷ゼリフと、昔話
何でも、何事も、“3年”続けろ。それで合わなきゃ、やめていい。





中学の卒業式の日に先生が言い放ったいかにも古くさいセリフに、残念ながらガキンチョだった私は不覚にも心を打たれていた。





「いいか?3年続けることに意味があるんだ。1年続ければ『やり方』が分かる。2年続ければ『抜き方』が分かる。3年続けてやっと『愛し方』が分かる」





先生の言い回しがなんとも軽快で、当時の私は卒業の感涙も相まってそれはそれは真面目にその言葉を反芻していた。






「つまり、3年目でやめたら『つまらないまま』終わっちまうし、2年目でやめたら『ツラいまま』終わっちまう。1年目でやめたら?そう。『なにも分からないまま』、終わりなんだ」






だから、どんなことでもまずは3年、続けて欲しい。と。先生はそう締めくくって、最後のHRを終えた。






もしかしたら、先生は毎回卒業生にはこの言葉を送って、勝手に悦に入って、「いやぁ、今年の生徒も手がかかったなァ」なんて言って。





飲み屋で1杯やるころには私の顔も名前も、喋ったことも、きれいさっぱり忘れてしまっているかもしれない。





案外それっぽっちの心持ちで、あの言葉を口にしただけかもしれない。





それでもあの時の私には先生のセリフのひとつひとつが宝石みたいにキラキラ光って見えて、教卓の上を軽やかに、色とりどりに、跳ね回って見えたのだ。





──だから、私は先生のあのセリフを覚えてて。






一言一句違わずに、恥ずかしげも無く丸パクリして。






あの時、界人の前で堂々と使って見せたのだ。
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