“Three Years”isn't so long
「事務所にピンハネされても、そろそろちゃんと入るようになったろ、カイト?」

「まァね」

「ヨシ!クルマ買えクルマ!安くしとくから」





ベースの「akira」は、自動車の営業マン。背が高くて、声がでかくて、押しも強いアキラには、ベーシストと同じくらいの天職だと思う。毎月山ほど車を売って、そのたびに自分の車も買い換える。おまけにいつだっておしゃれだ。





「こんなところで営業するな。メシが不味くなる」

「ブラウンのトコで口座作ったら、なんかメリットってある?」

「…多少はな。下宿の近くに支店あるのか?」

「お前もしてんじゃん、営業」





ドラムの「brown」はトレードマークだった茶髪の坊主頭をすっかり黒くして、地元の銀行で働いている。寡黙で真面目なブラウンは「イメージが良くない」と言って、就職してすぐタバコもやめた。





「ハーイ。仕事の話は禁止ぃ。ついてけない!つまんない!」





そして、昔と変わらず駄々をこねる「klang」のお姫様、ボーカルの「Lilha」。彼女は、と言うと。





「私だけ仕事してないみたいじゃん!」

「みたいじゃなくて、してないんだよ、アホリルハ」

「やめてやれアキラ、本当のことを言うのは」

「…っていうか、今お酒飲んで大丈夫なの…?」

「え、ダメなの?」





…「大人」をとっくに通り越して、「お母さん」になっていた。
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