あまの邪鬼な暴君
「すーず!が、また本読んでる!」
「ええっと。いや、まあ、本ではあるんだけど……」
電車でいっちゃんとバイバイした私は、車両を変え、一人でガッタンゴットン電車に揺らされ、高校に着いた。
そうして途中に寄ったコンビニで、求人雑誌を買い、それをHRまでの暇潰しに読んでいたのだ。
「え、なになに。すずバイトすんの?」
そんな手元に置いた求人雑誌を見つけたみーちゃんは、大きくて真ん丸な目を光らせた。
「あーうん。するんだけど、でもよく分からなくて……」
「ね、ちょっとそれ貸して~!」
みーちゃんは感心したように詠嘆すると、私の手元から求人雑誌を取り、ペラペラとめくる。
「確かに色々あるね~。うーん。飲食系がいいの?それとも本屋とか?あ、でも高校不可だって~」
「……あんまり忙しいところは嫌かなぁ。迷惑かけちゃいそう……」
「あはは、確かに。すずはファーストフード店とか向いてなさそう。でもせっかくバイトするならさ、出会い的なのも期待しちゃうよね~」
「出会い?」
首をかしげる私に、みーちゃんはそうそう!と頷く。
「他高校の人とかさ!大学生もいるわけじゃん?」
あー、なるほど。
「お金も恋もしてこその青春!って感じだよね~!あたしも始めよっかなぁ」
「え!みーちゃんなら何でも似合うよ!器用だし要領良いし!」
「はいはい、あんがとね。それよりすずは、自分がどうなのか考えな~?」
自分がどうなのか。
うーん。
飲食店は、難しい気がする。
急ぐの苦手だし、きっとたくさんお待たせさせちゃう。
コンビニもまた然り。
かといって、本屋さんは高校不可だし。
「どーしよっかなぁ……」
「へえ。藤咲、バイト探してるのか?」
うーん、と唸っている私に、登校して来た神田くんが挨拶をしてくれる。
「神田くん、おはよう~」
「おー神田、おはよ~」
「ああ。これ」
それから神田くんは、リュックを机に下ろし。
みーちゃんが手に持つ求人雑誌を覗き込む。
「え?」
「俺の働いてる店」