あまの邪鬼な暴君
バイトかぁ。
バイトなぁ。
駅から自宅までの帰路を、一人で考え事をしながら歩く。
この前いっちゃんママに、バイトやるんですー!って言っちゃった手前、やらざるを得ない状況にあるもんなぁ。
というか、バーベキューを断る口実が作りたいのだ。
あーあ。
お母さんが、本ばっか読んでるなんて言うから……
「バーベキューかぁ」
いっちゃんが来ないなら、行くんだけどなぁ。
でも、いっちゃんママの口振りからすると、いっちゃんは私が行かなかった3年間も参加してたみたいだった。
来ないという可能性は低そうだ。
「はぁ……」
「シケた面してんな、転ぶぞブス!」
頭の真上から怒鳴られ、膝がカクンと折れた。
「い、いいい」
「マジでコケてどーすんだよ」
「それは!だっていっちゃんが急に声………」
もっと普通に「よ!すず!」とかできないのか。
まあ、できてもしないのが、いっちゃんなんだけど。そんな望みはもう捨てたけど。
「人のせいにしてんじゃねえ」
いっちゃんは昔からそうだ。
どこで学んだのか知らないけど、人を罵る言葉ばっか言う。
驚かせたり、意地悪ばっかするのだ。
小さい頃、そんないっちゃんに私は怯えていた。
会うたびにブスブス言われて、カエルとか、セミの脱け殻とか投げられれば、そりゃあ怯えるだろう。
「おい、グズスズ!」
それは、今でも変わらない。
いっちゃんは相変わらず暴言も意地悪も言う。
たまーに優しいことも含めて。
いっちゃんは、昔も今も変わらない。
「てめぇなに黙ってんだよ」
「べ、別に」
フラれてもなお、彼との会話にドキドキする私も、変わらないのは同じだ。