あまの邪鬼な暴君
ポツンと取り残された、私。
一体何がいっちゃんの勘に触ったのか分からないけど、すごい怒ってたなぁ。
まあ、今朝と同じく、一緒に帰ろうと約束していたわけではないので、別に気にしない。
いっちゃんには、会うよりも。
遭遇、という表現が正しいなと思う。
いっちゃんは気まぐれな生き物だから。
(……それにしても。最近は頻繁に遭遇するなぁ)
中学に通っていた3年間は、全くもって会うことが無かったのに。
それは単に偶然がそうしていたのか、私が無意識に避けていたのか、いっちゃんの気まぐれか。
真相は定かではないけれど、それでも中学の3年間は私と彼が喋ったことなんて1度も無かった。
高校に入学してからだろう。
いっちゃんが頻繁に声をかけて来るようになったのは。
……声をかけるっていうか罵倒だけどね。
入学式の日も含め、会えば必ず声をかけてくれるいっちゃん。
「………気に、しなくなったのかな」
小学6年生のバレンタイン。
彼は、あの日のことを、気にかけるまでもない思い出として処理してしまったのだろうか。
「………私は、今でもずっと気にしてるのに」
気にして、ツラくて、苦しくて。
でも、今みたく声をかけてきてくれることは嬉しいのだ。
バカでズルい私は、やっぱり彼の傍には相応しくない。