ソファーに並んで
いつもの様に本を読んでいる律だが何かを気にしている
「う~ん…やっぱり気になるなぁ」
要はソファーに横になった状態で聞く
「どしたの?その本ってそんなに難しいの?律?」
要の方へ顔を向けて応える
「いや、違うんだ…本じゃなくてコレだよ、要」
律は指先で前髪をつまみ、持ち上げる
「けっこう長くなってたみたいで本読んでると邪魔になるんだよね…」
無言のまま起き上がり、律へ近付く要…どこか嬉しそうな表情だ
「よし!じゃあ行こうか?」
本を閉じて要に聞く
「どこに?散髪なら一人でいつもの…っえ!?要?」
まだ律が話していたが、急に要は肩で律を担ぎ上げる!混乱しながら訴える律
「ちょっと要っ!?降ろしてよっ!何なの?」
要は、そのまま歩きだす…
「まあまあ~いいから!いいから!」
どこに向かうのかは解らない、ただハッキリ解る事といえば、要は律を降ろすつもりは一切無いという事実のみ…家を出て一言だけ
「しっかり掴まっててね!」
安定した位置へ律を担ぎ直し、走り出す!
兄の悲鳴が虚しく響く…通りすぎる人たちの振り返る視線が痛く恥ずかしい、弟は前しか見ていないし気にしていない様子…目的地に到着したのか?やっと速度が落ちる
「ハァ…ハァ……源さん!いますかっ!?」
息を切らしながらも要が叫び、建物へ入って行く…看板に源の字を丸で囲い、下にGENと書いてある、一見では居酒屋みたいだが…どうやら美容室のようだ
「あら?要ちゃんじゃないの…それと…?」
ようやく律を降ろす、恐怖と恥ずかしさで涙目になっている…無理もない…
「前から…ハァ…話して…た…兄の律です」
律は腰が抜けてしまい立ち上がれないが首と肩だけで声が聞こえる後方へ顔を向ける
< 25 / 40 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop