ソファーに並んで
帰路に着く4人を店前で見送る
「本当に、いいんですか?」
律は源へ代金の確認をする。
「いいのよ~お金なんて受け取っちゃったらバチがあたるわ…ただ、絶対に次も私の所に来てね?絶対よ?」
右の鼻にティッシュを詰めた状態で源は応える。姿が見えなくなるまで律たちへ手を振り源はひとりになる。
「最高だったわ…律ちゃん…思いがけない出会いってあるのねフフフッ」
その時、一瞬の強風が吹いたと同時に源の視界が真っ暗になった。そして、共に接近する大声
「ナイスキャッチじゃあー!お嬢さん!」
後方から声が聴こえたが頭上を通り声は前方へ移動した。それと同時に源の視界は解放されるが視線は完全に奪われた…風になびき日の光により銀色にも見える白髪、凛と着こなした和服、振り返った瞬間に見えた口髭と眉毛が風格を漂わせる。源の視界を遮断した帽子を片手に立つのは六助だった。

〝…美しい…なんて美しいの…〟

瞬きも忘れて源はうっとりと六助を見つめ続ける。
「この帽子はワシの宝物なんじゃ、風にさらわれるとは不覚じゃった!お嬢さんのおかげで助かったわい、ありがとう」
きっちりと帽子を被り直した六助、それに対して源は後ろへよろけて倒れそうになる。しかし、それを片腕で支える善一朗がいた。
「おっと、大丈夫ですか?ジイさんが失礼しました」
またもや源は目を奪われる。一瞬、女性かと錯覚する程の淡麗な顔立ち、自身を支えてくれている腕から伝わる力強くもどこか優しさを感じる感覚

〝ああ…美しい…〟

「立てますか?少し震えていますが…」
源はこくこくと首を縦に振り無言のまま立ち上がる。
「んん?顔が赤いのぉ?風邪かもしれんから気をつけなさいな?綺麗なお嬢さん」

「では僕たちはこれで失礼しますね」

軽く一礼し二人は歩いてゆく
「それってバアさんからのプレゼントだから宝物なんでしょ?」
「そうじゃ!家族から貰った物は全部ワシの宝物じゃ!善が小さい頃、ワシに川で拾ってくれた石も宝物じゃぞ?」
「ええー!?それ10年以上前じゃないの?ーー」
遠ざかってゆく話し声…源はひとり立ちつくし、そっと一言だけ

「占い…なめてたわ私…」

詰めた反対の鼻から血がツーっと流れた
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