ソファーに並んで
1枚の用紙を前に置き、片手にボールペン…
「先方から異議が有り…これより我々3名で律強化計画について秘密会議を行う…尚、この内容は他言無用でお願いしたい、特に律には」
コクリと姉妹二人は頷く
「俺が考えた計画に何か意見は?」
スッと指をさし明音が発言
「隊長っ!ランニングではなくウォーキングからの方が良いのではないでしょうか?ストレッチも重要です…」
千尋も賛同する様にウンウンと頷く、ペンで文字へ斜線を入れ新要素を記入してゆく
「うむ!実に参考になる意見だ…感謝するよ、明音隊員…流石はスポーツ現役者だ」


ーーー「ねぇ?ソレ、何してるの?」
律が言う事はもっともだ…高校生3人が壁際の机の下に潜り、下半身は飛び出ている。珍妙な光景である。
「大切な会議中なんだ!律は黙っててよ!」

「隊長のおっしゃる通りです!律くんは黙ってて!ねぇ?お姉ちゃんもそう思うでしょ!?」

千尋もコクリと頷く…
「いや、何で明音ちゃんも千尋も要にのるの?それに僕がいる時点で、それって秘密会議じゃないよね?」
怒っているわけではないが律の声が荒くなる
「僕を強くしたいって事は充分に解った!でも要!理由が全然、解らないよ?何かあったの?…」
律は真剣に要へ問う
「それは……言えない…」
要は黙秘しようとするが律は要の両肩を掴む
「いい加減にしろよっ!何かあったんだろ?隠し事はしないでよ…お願いだ…教えてよ?」

今度の律は怒った…否、たった一人の兄弟であり双子の弟に黙秘され、哀しさと寂しさを感じた…
「それなら律の方だって!……」
要は何か言おうとしたが言葉を飲み込む
「…いや…何でもない……でも言えない、ゴメン…」
律は返す言葉が見付からず下を向き黙ってしまう、いつも何でも話してくれる要が断固として話そうとしない
要の肩を掴んだ腕が少し震えている…
「ちょっと!二人とも…」
割って入ろうとした明音を千尋が止め、首を横に振り静かに言う
「ダメ…わかるでしょ?」
数秒間の深い沈黙が何時間にも感じた…重い空気の内で最初に出た言葉は、震えながら律が弟の名前を呼ぶ声…
「…かっ…要ぇ…」
これが律の出来る最大だったのであろうが皮肉にも最悪である。同じ顔の人間が泣くのを必死に堪えて自分の名前を呼ぶ…耐え難い…
律の腕をほどき、要は再度謝る。
「ゴメン…」
幾度も謝る。
「…ゴメン…ゴメン……ゴメン」
要は堪えきれず外へ飛び出す、駆け降りる階段の音が響き、律はその場で膝をついてしまった…
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