飛べない人
帰り道。
桃音ちゃんと一緒に プリントを届けに行く事になった。
桃音ちゃんとは全然話した事がなくて 紗綾ちゃんの家につくまで ずっと沈黙していた。

「ここが紗綾ちゃんの家……」

赤い屋根の綺麗なお家。
庭はうちと同じくらいの大きさで、外には白くて大きな犬が1匹。
二階の方を見上げると紗綾ちゃんの部屋らしき窓があった。
ちょっと気になったけど、カーテンが閉まってて 何も見えなかった。

「何ボサっとしてんの。」

「え?う、ううん。なんでもないよ。」

桃音ちゃんの声に気付き、私は慌ててインターホンを押した。

〘 ……どちら様ですか?〙

しばらくすると、インターホンから紗綾ちゃんのお母さんらしき人の声が聞こえた。

「あ、あの、紗綾ちゃんにプリント届けに来ました!」

〘 あら。ありがとう。すぐそっちに行くわね。〙

紗綾ちゃんのお母さんはそう言うと、しばらくして玄関のドアを開けた。

「遅くなってごめんなさいね。さ、上がって上がって。」

紗綾ちゃんのお母さんは 私と桃音ちゃんの背中を押す。
最初はあがるのをためらったけど あまりにも嬉しそうな顔をしてたから 言い出せなかった。

「ここが紗綾の部屋よ。」

紗綾ちゃんのお母さんが案内してくれたのは、二階に上がってすぐの部屋。

「紗綾。お友達が来てくれたわよ。開けてあげて?」

ドアに向かって話しかけるけど 返事はない。

「ごめんなさいね。昨日からこんな調子なのよ。」

紗綾ちゃんのお母さんは少し寂しげに笑う。
今日は帰ろうと思った時。
部屋の中から声が聞こえた

「……ママ。下に行ってて。私達だけで喋りたいの。」

紗綾ちゃんはそう言う。

「じゃあ私は下に行ってるわね。あとでお茶でも持っていくわ。」

おばさんは少し戸惑いながら下へ向かった。
しばらくたって、部屋のドアが開く。

「……入って。」

紗綾ちゃんはそれだけ言って私達を部屋の中に入れた。
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