飛べない人

教室についた私達は ドアを開けた。

ガシャーン!!!

その瞬間。教室の中で大きな音が鳴った。

「キャッ」

横ではなちゃんの小さな悲鳴が聞こえる。
ふと下を見ると、目の前に女の子が倒れていた。

あぁ。またか。

私は心の中でポツリと呟く。

この学校では、毎日イジメが行われている。
今年のターゲットは 山崎紀ちゃん。(やまざきかなめ)
一匹狼って感じの、無口で大人しい性格。
普通にしてれば、こんな事にはならないはずだった。
でも、紀ちゃんは、この学校のリーダー。
革山桃音(かわやまももね)ちゃんの機嫌を一気にそこねてしまったのだ。
桃音ちゃんは気が強く、口調が荒い。
夜遊びも良くしていて 世間で言う不良みたいなものだった。
本来なら、とっくに退学させられているところだ。
でも、親が偉い人という理由で退学はさせられないみたい。

桃音ちゃんに逆らった人は、皆からいじめられる。
先生も、退職させられるのを恐れて何も言わない。
だから、誰も桃音ちゃんにはむかえないんだ。
そんな中で紀ちゃんは、桃音ちゃんに反抗したのだ。
確かそれは進学してすぐの事。


その日は新学期という事で 桃音ちゃんの機嫌はよかった。
いつもより笑顔が多く 皆内心皆ほっとしていた。

事件が起きたのは放課後の事。

桃音ちゃんは紀ちゃんの机の上に座り、楽しそうに喋っていた。
トイレから戻ってきて、それに気付く紀ちゃん。
普通なら、何も言わずにただどくのをまっつのが当たり前だった。
もし「どいて」何て言ったら、何をされるか分からないから。
なのに紀ちゃんは ───

「どいてくれない？」

桃音ちゃんの前に立ち、平然とそう言ったのだった。
その瞬間。教室が一気に静まり返る。

「……は？何言っ