飛べない人
昼放課。
私は1人で図書室に来ていた。
何かいい本はないかと探していると、本と本の隙間から、人の顔が見えた。

「わわっ!」

ビックリして大きな声がでてしまい、私は慌てて口を抑える。
さっき見えた人って。。
私は顔が見えた方へ近づいていく。

─やっぱり。

そこにいたのは 紀ちゃんだった。

「……紀……ちゃん……?」

おそるおそる声をかけると、紀ちゃんはびくっとして私を見た。

「え、あ、ごめんなさ、、」

不安そうな顔で謝る紀ちゃん。
慌てた様子の紀ちゃんを見る限り、桃音ちゃん達から逃げてきたのだろう。

「大丈夫。私は何もしないから。」

私は紀ちゃんに微笑みかける。
それ以外に、何も言える事がなかったから。
少しびっくりした顔をしてたけれど、紀ちゃんもゆっくりと微笑んでくれた。

「ありがとう……」

小さな声で紀ちゃんはそう言うと、私と居たら迷惑だからと、図書室を出ていってしまった。

「……もっと、喋りたかったな……」

そんな事をポツリと呟いた私は、紀ちゃんの後に続き教室へと向かったのだった。
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