飛べない人
それからしばらくして、救急車が来た。
もちろん。授業は中止。
皆 すぐに帰っていく事になった。
私は帰り道の途中。
1人で考え込んでいた。
先生は何も言わなかったけれど、あれは多分。
紀ちゃんの……。
そう思った途端。
またあの無残な姿の遺体が脳裏に浮かぶ。
それと同時に 吐き気がこみ上げてきた。
私は慌てて口を抑える。
小走りで家へ向かい、ただいまも言わずトイレに駆け込む。

「うっ……おぇ……。」

何度も何度も吐いて 数十分たってやっと収まった。
落ち着いた私は、トイレを出た。
私は水を飲みたくてリビングへ向かうと

「あら?随分早いわね。何かあったの?」

そこに居たお母さんが話しかけてきた。
私は何があったか言おうとしたが、どうしても思い出したくなくて言えなかった。
するとお母さんが優しく微笑んで言う。

「相当嫌な事があったのね?無理に言わなくていいのよ。話したくなったら言ってね。」

私は心からありがたく思った。

「ありがとう。」

私はお礼だけ言うと 部屋に向かった。
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