飛べない人
紗綾ちゃんの家
朝。いつものように起きて、いつものように学校に行く。
何も変わらない日常。
ただ少し違うのはクラスの空気だろうか。
どんよりとした 重い空気。
いくらイジメられてた紀ちゃんとはいえ、死んでしまったとなれば、皆が暗いも納得がいく。
ふと、弥生ちゃんの席をみた。

……空席……か。

弥生ちゃんは 落ちた所を見てしまったのだから、相当ショックだったのだろう。

……あれ？もう一つ。空席がある。

あの席は確か……紗綾ちゃんの席。
いつもなら休まないのに、珍しいな。
そんな事を考えていると 後ろから聞きなれた声が聞こえた。

「すみれ、おはよう。」

らんちゃんだった。
声のトーンが、 少し暗い。
らんちゃんもショックだよね。

「らんちゃんおはよう。」

私は紗綾ちゃんに力なく挨拶をする。

「はなこは……休みか……」

らんちゃんがポツリと呟く。

「うん……人が落ちるとこ見ちゃったら、そりゃ気分悪くなるよね。」

「そうよね。。」

らんちゃんと会話をしていると、教室のドアが開いた。

「ねぇ聞いた？紀のヤツ。自殺したんだって。ダサすぎでしょ。」

入ってきたのは、桃音ちゃんの馬鹿にしたような声。

「まぁあいつなんて居なくなっても変わんねぇよな。」

桃音ちゃんに続いて、笑いながら入ってきたのは蓮華ちゃん。
２人とも 楽しそう。
人が1人、死んだっていうのに。
さすがにクラスの皆も不信感を抱く。
教室の空気が暗いのに気付いた桃音ちゃんは、すぐそばにある机を思い切り蹴り飛ばした。

「何アンタら。もしかして紀が死んで悲しいとか思ってるわけ？ばっかじゃないの？」

鼻で笑って見せる桃音ちゃん。
こんな状況でも 笑っていれるなんて、正気なんだろうか。
私はバレないように、桃音ちゃんを睨んだのだった。
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表紙・目次

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