誠の誓い
「クッソ!イテテッ!」


永倉が下駄を片手に、ひょこひょこ歩いていた


「結べないんですか?」


「ッ!!!由縁!!じゃねぇえと……」


「由縁でもいいですよ
下駄貸して下さい」


「いいよ!!」


「組長に怪我されると、困ります」



無言で差し出された下駄を受け取った



「そこに座って」



ビリビリッと手拭いを裂き

器用に切れた下駄の鼻緒を治した


「痛くないですか?」


「おう!前よりいいくれぇだ!」


「それは、何よりです」


「ありがとうな!先生の所だろ!?」


「はい いってきます」



立ち上がり、ペコッとお辞儀して


森本の家へ




「先生ぇーーー!!!」


「なんだい」


「ひゃあ!!!」


真後ろから、声がすると思っていなかった為、驚いた



「久しぶりに女の子に戻ったね」


「へへっ 総兄ちゃんが言うからね」






家の中に入ると


森本が急に、縁に口づけをしようとした


今まで、なかったことに驚き


肩がビクッと上がる




「君が…誰を想っているのか
僕にもわかったよ」



そう言い、口づけをせず

離れた







戸惑う縁を余所に


文机でサラサラと書き物をした




呆然と立ち尽くしていた縁が



森本の後ろから声をかけた



「先生の為に、着物着てきたんだ」


「沖田君に言われたからだろ」






< 106 / 160 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop