彼氏の好きなヒトになる方法



「……え、つーか、もしかして今の話、聞こえてた?」



友達のひとりが言った瞬間、彼らの顔が固まった。



一気に空間を包む『マズイ』という空気。



それを感じて、私はさっきの話が本当なんだと実感した。




「………えっ、と」




何か言わなきゃ。でも、何言ったらいいの?


聞こえてないふりする?


でももう無理だよね。俊くん、私がぜんぶ聞いてたって気付いてる。


どうしようかと必死に考えようとするのに、頭はフリーズしてて動かない。


落ちた携帯を拾いながら、何か言おうと口を動かすけど、声が出なかった。その代わり、なんでか涙が出てきて、喉の奥が痛んだ。



「………………」

「………佳菜。今のは……」



俊くんの声を聞いて、途端、何かが崩壊しそうになった。


涙腺だろうか、感情だろうか。


今の話を認める認めないに関係なく、今の俊くんから何か聞いたら、本当に泣き出してしまう気がした。





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