彼氏の好きなヒトになる方法
いきなり笑い始めた私に、隼がギョッとした顔をする。
私はひとしきり笑った後、隼を見て言ったんだ。
『楽しーね』って。
「いきなり『楽しい』とか言い出すから混乱したわ」
過去に思いを馳せていたら、隼が小馬鹿にした顔で言った。
「うるさいなあ。なんか色々ひっくるめて『楽しい』って思っちゃったんだよ」
こいつはたびたびこの話を持ち出してくる。もう1年も前だっつの。
「………けど、な。佳菜」
私たちの横を、何人もの子供が通り過ぎる。
おもちゃ屋さんからはポップな音楽がいくつも重なって聞こえてくる。
名前を呼ばれて見上げると、ばちりと目が合った。
その目が今までに見たことのない色をしていて、その一瞬だけ、周りの音が消えた気がした。