彼氏の好きなヒトになる方法
「佳菜が『楽しい』って言って笑ってんの見たら、なんかぜんぶどーでもよくなんの。そんで今度は、目の前にあるぜんぶを楽しみたくなる」
普段ぶっきらぼうな彼には似合わない、優しく丁寧な言葉だった。
隼にそんなことを言われたのは初めてで、何も言えなくなる。
隼と目を合わせて呆然としていると、近くから知らない男子の声が聞こえてきた。
「あそこにいんの、もしかして俊の彼女?」
『俊』と言う名前にハッとした。
横を向くと、いくつか見覚えのある顔が並んでいる男子高校生の集団と…真ん中に、自分の彼氏の姿が見えた。
俊くんと目が合う。彼は私に気づくと、小さく目を見開いた。
「俊くん!」
思わず呼ぶと、俊くんは私の横をちらりと見てから、優しく目を細めて「佳菜」と呼んでくれた。