彼氏の好きなヒトになる方法
俊くんは先ほどより幾分か表情を和らげると、「どうも」とお辞儀した。
璃子の後ろから、ぞろぞろとマナミたちもやってきた。
ホッとしたのもつかの間、私のそばまで来てマナミがボソッと呟いた。
「修羅場?」
「違うわ」
何を言いだすんだ。断じて違う。
「…………」
ふいに視線を感じてそっちを見ると、俊くんが何か言いたげに私を見ていた。
「…………?」
私が『なに?』と首を傾げてみせると、俊くんは眉根を寄せて『なんでもない』というように首を横に振った。
「……また、連絡する」
小さな声でそう言って、俊くんは踵を返し、お友達集団の方へ戻っていった。
「あ、……うん」
なんだか表情が暗かったな。何考えてるんだろう……。
私が頭に『?』マークを浮かべているうちに、俊くんたちはさっさと人混みの中に紛れて行ってしまった。