彼氏の好きなヒトになる方法


「あ、合わないとか……そんなことない。そんなこと思ったことない」

「でも現に、あいつは今のお前を否定してんだろ?今のお前じゃ合わないってことじゃん」

「…………」

「『楽しいばっかりじゃダメ』って言うけどさ、いつも言ってるお前のモットー曲げてまで付き合う必要あんの?そこ、お前にとって大事な部分なんじゃねえの」


隼は畳み掛けるようにそんなことを言ってくる。なんだか混乱してきた。


私は、俊くんと仲良く、楽しく付き合っていたい。


そのために、我慢する。隼や晃、学との付き合い方を考える。


近くなりすぎないように。仲良くなりすぎないように。気をつけて、気をつけてー……。



「……まー、いいけど。彼氏のために、俺らとつるむのやめてもいいって思ってんなら」

「そっ、それはやだ!」



思わず大きな声が出た。


ハッとしてうつむいた私を見て、やっぱり隼は笑うことも、呆れた顔もしない。


ただ、真剣な顔をして、私を見ていた。



「……お前にはもっと、合うやつがいるよ」



窓から射した西日が、私と隼の間を通る。


隼の声はいつになく穏やかで、静かで、真摯だった。


< 283 / 441 >

この作品をシェア

pagetop