彼氏の好きなヒトになる方法
「あ、合わないとか……そんなことない。そんなこと思ったことない」
「でも現に、あいつは今のお前を否定してんだろ?今のお前じゃ合わないってことじゃん」
「…………」
「『楽しいばっかりじゃダメ』って言うけどさ、いつも言ってるお前のモットー曲げてまで付き合う必要あんの?そこ、お前にとって大事な部分なんじゃねえの」
隼は畳み掛けるようにそんなことを言ってくる。なんだか混乱してきた。
私は、俊くんと仲良く、楽しく付き合っていたい。
そのために、我慢する。隼や晃、学との付き合い方を考える。
近くなりすぎないように。仲良くなりすぎないように。気をつけて、気をつけてー……。
「……まー、いいけど。彼氏のために、俺らとつるむのやめてもいいって思ってんなら」
「そっ、それはやだ!」
思わず大きな声が出た。
ハッとしてうつむいた私を見て、やっぱり隼は笑うことも、呆れた顔もしない。
ただ、真剣な顔をして、私を見ていた。
「……お前にはもっと、合うやつがいるよ」
窓から射した西日が、私と隼の間を通る。
隼の声はいつになく穏やかで、静かで、真摯だった。