彼氏の好きなヒトになる方法
「……こんなのすぐ、引っ込むし……」
こぼれそうになる涙を、指で拭う。
そんな私を見つめる隼の顔は、相変わらず穏やかで。
「……お前のその顔が見れただけで、俺はもうじゅーぶんだよ」
そんなことを言って、隼は私の頭をぽんぽんと撫でた。
「帰ろ」と言って、私の前を歩き出す。
「……隼」
「ん?」
「ありがと……」
「おー」
隼は振り返って明るく笑って見せた。
自分が誰かの好きな人になるって、すごいことなんだなあ。
くれる想いがあまりに優しくて、とうとくて、私にはもったいないよ。
隼の背中を見ながら、私は自分の好きな人のことを思い出した。
……ああ、私もちゃんと言わなきゃ。
*
家に帰って、自分の部屋に入ると、そのまますぐに携帯を取り出して電話をかけた。
耳元で、繰り返しコール音が流れる。
……今日、バイトかな。出てくれるかな……。
諦めかけたその時、プッとコール音が止んだ。
『……はい』
出た!
一気に鼓動が速くなってくる。緊張して、頭が真っ白になりそうだ。