彼氏の好きなヒトになる方法


「あ…….もしもし、佳菜です。いきなりごめんね。今、大丈夫……?」

『うん』


耳元から聞こえてくるのは、いつも通りの声だ。


私は無意識に、携帯を持っていない方の手を握りしめていた。


「え……えっと……私、あれから色々考えたんだけど。私、やっぱり俊くんのこと好きだから、このままは嫌だなって思ったの。あ、謝りたいこととか、話したいこととか……いっぱいあって」

『……うん』

「だ、だからその、今週、どっかで会えないかなあ?もし忙しかったら、私がそっちに会いに……」

『俺が行く』



強い声で言われて驚いた。


思わず黙ってしまうと、俊くんが少し慌てた様子で『ごめん』と謝ってきた。


『……俺が、会いに行きたい。話したいことあるし……この前、途中で逃げたの俺だから。もう一回、会いに行かせて』



胸がきゅう、と甘く痛んだ。


なんでそんなに優しいんだろう。私、すごく不安にさせて、傷つけたのに。


俊くんは、いつものように会いに来てくれるんだね。



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