彼氏の好きなヒトになる方法
「…………」
なんとなく、変な沈黙が落ちる。
私の息が整ってきた頃、俊くんの口がおもむろに開いた。
「ーー……佳菜、あのさ……」
「佳菜ぁーー」
後ろから、間延びした隼の声が聞こえてきて、びくりと肩が跳ねた。
振り返ると、片手に私のトートバッグを持った隼がこちらへ歩いてくるのが見えた。
「お前、これ忘れて……ん?」
私の前に立つ俊くんの存在に気づいたのか、眉根を寄せた。
うわあ。今このタイミングで、最も居合わせたくない3人が揃ってしまった。
トートバッグには今日使った体操服が入ってるから、持ってきてくれたのはすごく有難い!!んだけども!!
隼は私の後ろまでくると、私に無言でバッグを渡しながら、じっと俊くんを見ていた。もはや睨んでいると言ってもいい目つきだ。
い、いつかに見た光景、再び……。
「あー、隼!わざわざありがとね。助かったよー」
「……おー。てか何アンタ、また会いに来たん?この前ケンカしたんじゃなかったっけ」
ええいやめろ。
さすがにこの2人の仲の悪さの原因はわかったけど、わざわざケンカ売るんじゃない。