彼氏の好きなヒトになる方法


俊くんもしばらくは私のことを見つめていたけど、やがて顔を赤くして目をそらした。



「……なんか言ってよ」



ゴーン……。


なぜか頭の中で寺の鐘が鳴った。


そのまま108回ついて煩悩を消してほしいほど、私の脳内は混沌を極めた。


シンバルを持ったサルのおもちゃがうるさく騒ぎ始める。ラッパを持った天使が舞い踊る。その中心で脳内の私が鼻血を吹いて倒れていた。


私が再び口を開くまで、頭の中で地球が三回公転した。


「……えっと、好きです」

「うん、いや、確かに『なんか言って』とは言ったけど」


思わず真顔で告白してしまった。


だってそれしか言葉が出てこない。え?好き。超好き。


どうしたっていうんだ俊くん。君が私にこんなことを言ってくれる日がこんなに早く来るとは思わなかったよ。


君は本当に俊くんですか?

私の願望が見せている幻ではないのですか?


表情に反して大混乱している私をよそに、俊くんは心を落ち着けようとしているのか深呼吸を繰り返していた。



< 332 / 441 >

この作品をシェア

pagetop