彼氏の好きなヒトになる方法
その後はお互い心の中が忙しく、会話がなかった。
そんな私たちの空気を壊したのは、バスが来る予定の10分前にバス停に来たカップルだった。
「バス、何時に来るのー?」
「えーと、10分だな」
時刻表を見ながら話しているカップルは、仲良さそうに手を繋いでいた。
女の子はぴったりと男の子にくっついている。ラ、ラブラブだ。
いつか私たちもあんな風になれるかなあ。
手を繋いだり、抱きしめ合ったり、き、き、キスしたり……。
私たちって、あんまりそういう雰囲気にならない。
俊くんはそういう男の子っぽい欲求を感じさせないんだよね。
一回、抱きしめられたことはあるけど……。それきりだ。
10分前を過ぎた頃から、バスを待つ人も増えてきた。
うーん、お年寄りも多いし、すでにバスに乗ってる人が多かったら座れないかも。
ふいに、俊くんが「佳菜」と呼んだ。
見ると、彼は私を見つめて手を差し出していた。