彼氏の好きなヒトになる方法


「す、捨てないよ!何言ってんの!?さすがに怒るよ!?」

「……………うん。ごめん、俺今ダメだ。ちょっと顔洗ってくる」


言うと、彼はふらふらした足取りでトイレの方へ向かった。


ハラハラしながら見守っていると、彼の目の前に水たまりがあるのに気づいて焦った。すぐそばに足洗い場があるから……!



「俊くん気をつけて、そこ………」



水たまり、と言おうとしたが、遅かった。


あっと思った時には、つるっと滑って尻餅をついている俊くんが目の前にいた。



「…………………」



またもやその場に落ちる沈黙。気まずさが今までの比ではない。


俊くんは無言で起き上がったけど、そのまま立ち上がらずにしゃがみ込んでいた。ずーん……という効果音がこんなにふさわしい光景を初めて見た。



私はその後ろ姿を見ていると、なんだか笑いが込み上げてきてしまった。


「……だ、大丈夫……?」

「……心が大丈夫じゃない」


よく見たらボディバッグぱんぱんだし。お尻ちょっと濡れてるし。





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