彼氏の好きなヒトになる方法


つい1時間前まで驚くほど格好良かった彼氏が驚くほど格好悪くて、私は肩を震わせて笑った。このひと、ほんとに面白い。


俊くんがふてくされた顔で振り返る。



「………さすがに嫌になったでしょ。こんな男」

「ふふふふふ……え?なに言ってんの、嫌になるわけないじゃん。こんなに面白い彼氏、そういないよ」

「……馬鹿にしてる」

「してないよ。ふ、あはははは!そっかあ、俊くん、私のこと楽しませようとして頑張ってくれてたんだね。そっか、そっかあ」



私、ちょっと忘れてたよ。


このひとが、実はただの不器用な男子高校生だってこと。


神様でも、完璧王子でもない。


私と一緒でまともに恋愛経験なくて、いつも手探りで。


私が怒ったら焦るし、泣いたら慌てるし、遠ざかったら不安になる。


ネガティブで女の子と話すのが苦手で、どっちかというと鈍感でヘタレで。


でも大切なひとにはすっごく真摯で優しくて、傷つけないために色んなこと考えてる。


ちゃんとじっくり考えてから発言する人だ。


きっと今日のデートの前半とか、会話の内容を頭の中で何度もシミュレーションしたんだろうなあ。




< 370 / 441 >

この作品をシェア

pagetop