彼氏の好きなヒトになる方法
少しの沈黙の後、彼がおもむろに口を開いた。
「…………あるよ。たくさん」
驚いて俊くんを見ると、目があった。
「え、あるの?」
「あるよ。俺、話すより考える時間の方がよっぽど多いし」
「ど、どんなときに私のこと考える?」
私はねえ、登校しながらとか始業前とか、授業中とか昼休みとか……と言うと、「ほぼずっとじゃん」と言われた。確かに。
「俺は……学校いるときもだけど、友達と本屋行ったり、コンビニ行ったり、飯食いに行ったり……あと、バイト中にカップルが来たりすると、思い出すよ」
「……そっちこそ、結構多いじゃん」
「うん。だからたくさんあるんだって」
照れ隠しに可愛くないことを言ってしまったけど、俊くんは穏やかな表情を崩さない。
「この前佳菜が言ってたやつが売ってるなあとか、このお菓子好きそうだなあとか。今度佳菜とこの店に行こうとか、そろそろちゃんと休みの日に会いたいからどこ行こうとか」
……うん。そっか、そっかあ。
すごく嬉しい。めちゃくちゃ嬉しい。
こんなに悩んで、俊くんのこと考えてるのは私だけかと思ってた。