彼氏の好きなヒトになる方法
「……………」
「あ……ごめん、私だけかも」
「……いや、俺も楽しいよ」
「ほんと?よかった」
お世辞かもしれない、気を遣って言ってくれたのかもしれない。
一瞬そう思ったけど、たぶん違うな、とすぐに思い直した。
そういう人じゃない気がする。気を遣ってお世辞を言うほど、器用な人じゃない気がする。
さっき見た、あの小さな笑顔。
この人は本当に面白いって思ったら、あんな風に笑うし、嫌だなって思ったら、ゲーセンに入った直後みたいに、顔をしかめたりするんだろう。
だからきっと、ちょっとでも楽しいって思ってくれてるんだって、信じられるよ。
「俊くん、次どっか行きたいところある?」
リュックサックを背負い直して尋ねてみると、俊くんは黙って首を横に振った。