彼氏の好きなヒトになる方法
「楽しかったねー。今日」
歩きながら俊くんの顔を覗き込むと、間髪入れずに「うん」という言葉が返ってきた。
夕日が、いつもの帰り道を真っ赤に染め上げる。
もうすぐ19時なのに。日が暮れるのが遅くなっていて、夏の到来を感じさせた。
「俊くんはー、どれがいちばん面白かった?」
「…………んー」
熟考タイムだ。私はその間ずっとニコニコしていた。
私はどうやらこの時間が好きらしい。俊くんといるって感じがするからかな。
「……ペンギンかな」
「あはは。すっごい可愛かったもんね」
「うん。ペンギン好きかもしれない。見てて安心する」
「ふふふふ」
なんか、似てるもんな。俊くんとペンギン。マイペースなところとか雰囲気とか。可愛いところとか。言わないけど。
「佳菜は?」
「んっとねー。クラゲが綺麗だった!あとセイウチも面白かったし、あとペリカンとー、サメと……」
「……一個じゃないんだね」
「あははーうん。いちばんって決めるの難しいね。面白かったのいっぱいありすぎる」
俊くんは穏やかな表情で前を向いたまま、「そうだね」と相槌を打った。
その横顔がほんとうに綺麗で、いつまでもこうやって、彼の表情が少しずつ変わるのを見ていたいなと思った。