彼氏の好きなヒトになる方法
「……俊くん」
ん?と彼がこっちを向く。
初めて会った時より随分柔らかくなった瞳に、私が映っていた。
「また一緒に行こうね」
来年でも、再来年でも、もっとずっと後でも。
一緒に色んなところ行こうね。いっぱい面白いもの見つけて、数え切れないくらい楽しい思い出つくろうね。
俊くんはほんの少しの間のあと、ぴたりと足を止めた。
振り返ると、俊くんがじっと私を見ていた。
夕方と夜の間、橙と藍色が混じった影が、彼の端正な顔にやさしく落ちていた。
「……俺、あの日佳菜に会ってよかった」
俊くんの眼差しは、まっすぐに私をとらえている。
「……あの日?」
「付き合うことになった日。あれがなかったら、佳菜のこと知らないままだった」
あの日……。
そもそも私たちのはじまりは、友達の紹介からだ。
マナミが俊くんの友達のサトシくんに勝手に写真を送ってて、それを見た俊くんが私と会ってくれた。
お互いがお互いを利用するために生まれた、必然的な出会い。