彼氏の好きなヒトになる方法
「あの日佳菜と過ごして、気づいたら『付き合って下さい』って言ってた。俺のくせに、不思議なくらい迷いがなかった」
……涙が出そうになって、必死にこらえた。
今日何回目だろう。私、こんなに涙脆い奴じゃないのに。
この人といると、自分で自分の感情がコントロールできなくなる。
『楽しい』が正義で、そればかり追い続けていた自分のペースが、いとも簡単に崩される。
俊くんが私をぎゅっと抱きしめた。安心する暖かさが私を包む。彼はそっと耳元で言った。
「俺と付き合ってくれてありがとう。佳菜といるようになってから、毎日見える景色が全然違う」
……あの日、瀬戸先輩と沙彩さんの後ろ姿を見つけていなかったら。
あのとき、俊くんがパスケースを落とさなかったら。
私たちはこうならなかった。
この恋のはじまりはあまりに利己的で打算的だと思ってたけど、君は君の目で私のことを見つけてくれてたんだね。