彼氏の好きなヒトになる方法


「…………あ」


その人は気づかず、そのまま出口の方へ歩いていく。


私は迷った。きょろきょろと辺りを見回すけど、園内には私と彼以外に誰もいない。


「………………」


10秒ほど考えたあと、私はようやくベンチから腰を上げた。


落ちたものを拾いに走る。

バスの定期券が入ったパスケースだ。ホルダー部分が切れているのを見て、だから落ちたのかと納得した。


パスケースを拾うと、すぐ前を歩く背中を追いかける。



「ーーあ、あの!」



彼は数秒遅れて立ち止まって、ゆっくりと振り返った。


私はそばまで走って立ち止まると、息を切らしながらパスケースを手渡した。



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