彼氏の好きなヒトになる方法
「こ、こんにちは……」
「こんにちは」
隠れてすみません。意気地なしですみません。
謝りたい気持ちもあったけど、それよりさっきの言葉が耳に焼き付いて離れない。
『もうすぐ彼女来るから』だってさ。マジ録音したかったわ。
俊くんだし、たぶんあんな逆ナン、今までに嫌というほど経験してるんだろうな。
だから、ああやって追い払うのなんか慣れっこなんだろうけど。
俊くんと出会ってから、少女漫画のものとは比べ物にならないくらい本物の胸キュンワードが日々更新されていく。いずれ語録を作りたい。
「……えっと。遅れてごめん」
「いいよ。あと俺、今日はバイトあるから家まで送れない。ごめん」
「あっ、そうなんだ!全然いいよ!わかった!」
ぶんぶんと首を横に振る。
同じ方向なわけでも、特に用事があるわけでもないのに、俊くんは毎回私の家の近くまで送ってくれる。